顔面神経麻痺の原因
顔面神経麻痺の発症の仕方から、ある程度、顔面神経麻痺の原因は診断可能です。
顔面神経麻痺の原因が特定できますと、それに対する治療方法が決まりますので、この顔面神経麻痺の原因特定・診断が大変と重要となります。
顔面神経麻痺の発症の仕方には、大きく分けて3つあります。これに生まれつきの顔面神経麻痺を加えると4つになります。
(1)突然、急に麻痺が生じる場合
「朝起きたら顔が動かない」、「気がついたら顔が曲がってきた」、という突然の顔面神経麻痺の発症で大変心配される方が多い麻痺の生じ方です。その中で最も頻度が高いのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」という呼ばれるウイルスが顔面神経管の中の顔面神経に感染して生じるとされる顔面神経麻痺です。
この「ベル麻痺」、「ハント症候群」の初期治療は、ステロイドや抗ウイルス剤の薬物治療が中心となります。
この治療は、耳鼻咽喉科が担当しておりますので、発症したらなるべく早期に耳鼻咽喉科を受診していただきます。
脳の血管が詰まったり、破れたりして生じるいわゆる「脳卒中」でも急に顔面神経麻痺になることがあります。その、多くは呂律が回らなくなったり、頭痛、意識障害、手足の麻痺やしびれなどの症状が合併します。脳卒中が原因であれば、一刻も早期の治療が必要ですので、救急車で脳神経外科や救急科を受診することをお勧めいたします。
(2)外科手術やケガの後に麻痺が生じる場合
聴神経腫瘍や小脳腫瘍などの脳腫瘍摘出のための脳神経外科の手術、真珠腫摘出のための耳鼻咽喉科の手術、耳下腺腫瘍・癌などの摘出のための手術、これらの手術によって顔面神経が損傷された場合、手術後に顔面神経麻痺が生じます。また、顔面神経が通っている側頭骨骨折や、顔面の深い傷によって顔面神経が損傷された場合にも、顔面神経麻痺が生じます。
(3)ゆっくりと麻痺が生じる場合
特殊な神経や血管の病気によって、顔面神経にもゆっくりと障害が加わった結果、顔面神経麻痺が生じます。また、聴力の低下もみられる場合には聴神経腫瘍の可能性がありますので、まずは脳神経外科や耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。
(4)生まれつき麻痺が認められる場合
胎児期の顔面神経や表情筋などの発生過程で、何らかの障害が生じた結果、顔面神経麻痺が生じます。麻痺の範囲は、片側だけあるいは両側の顔面神経麻痺の場合もあります。
比較的頻度の多い片側の顔面神経麻痺には、麻痺側だけの皮膚皮下組織、筋肉、顔面骨の発達が様々な程度に障害されて生じる「第1第2鰓弓症候群」という病気が合併することがあります。この病気には、耳の発達障害が多く見られいわゆる小耳症や聴力障害を伴います。
比較的頻度の多い両側の顔面神経麻痺には、「メビウス症候群」という、生まれつき顔面神経麻痺と眼の動きに関係する外転神経麻痺を合併する病気があります。これらの症候群でみられる顔面神経麻痺の程度と範囲および合併症は個人差が大変大きく認められます。
その他にも100以上の生まれつきの原因が特定されておりますが、特定できない場合もあります。顔面神経麻痺の症状以外にも、顔面の変形や口蓋裂などを伴うことも多いですので、小児科の先生から紹介していただき、顔面専門の形成外科を受診されることをお勧めいたします。