顔のこわばり・けいれん・異常共同運動を和らげる治療
ベル麻痺やハント症候群による急性顔面神経麻痺の後遺症として、発症から3カ月経過しても十分に回復しない患者さんにおいて、発症から6カ月以降になると、「顔のこわばり」、「けいれん」や「口を動かしたときに目がウインクしてしまう」などの好ましくない顔の異常な動き(「異常共同運動」といいます)が、高率に生じてきます。
最近の研究では、このような後遺症を予防または軽減したりする上で、適切な表情筋のリハビリテーションが大切重要であることが分かってきております。
特に、顔面神経麻痺が起こってからの最初の4ヶ月間における適切な表情筋リハビリテーションが、特に重要であるとされております。この期間、正しくない方法でのリハビリテーションや無理に表情筋を動かすような電気刺激運動療法を行うと、表情筋が固くなったり、異常共同運動がかえって起こりやすくなってしまいますので、注意が必要です。
私たちは、ベル麻痺やハント症候群による急性顔面神経麻痺による顔のバランスや表情を崩すこれらの後遺症をできるだけ最小限にするために、麻痺発症の早期から積極的に正しいリハビリテーションを導入した治療を行っております。
中には、適切なリハビリテーションを行っても、顔のこわばりやけいれん、異常共同運動が残ってしまう方もおられます。
その場合には、顔のこわばりやけいれんを和らげるボツリヌストキシン注射治療や、異常共同運動を改善する手術療法(筋肉切除術など)を行い、顔のバランス、表情の改善を最大限図るような治療をリハビリテーションと一貫して提供しております。
実際にリハビリテーションの具体的なやり方をお知りになりたい方や、後遺症の「顔のこわばり」、「けいれん」、「異常共同運動」にお悩みの方には、受診をお勧めいたします。
以下に、私たちのベル麻痺、ハント症候群による顔面神経麻痺のリハビリテーションの方法をご紹介いたします。
顔面神経麻痺のリハビリテーション方法
1.なるべく顔の表情を出さないようしながら15分間、麻痺している側の顔の表情筋を伸ばす方向にマッサージを行ないます。
①-⑤は、マッサージする筋肉の順番です。それぞれ、3分間を目標にマッサージしましょう。くれぐれも、顔の筋肉は動かさずリラックスした状態で行いましょう。
鏡を見ながらちゃんとできているか自分の顔の動きを確認しながらするとより効果的です。
最低でも、朝1回以上、昼1回以上、夜1回以上おこないましょう。
目標は、午前中2回、午後から夕方にかけて2回、夕方から寝るまでに2回行いましょう。
① おでこの筋肉(前頭筋:眉毛を挙げる筋肉)を縦方向に伸ばすようにマッサージします。(3分間)
② 眼の周りの筋肉(眼輪筋:眼を閉じる筋肉)を、眼の周りで放射状に筋肉を伸ばすようにマッサージします。(3分間)
③ 頬の筋肉(頬骨筋:口角を引き上げて笑う筋肉)を、口角と頬骨を結ぶ斜め方向に筋肉を伸ばすようにマッサージします。(3分間)
④ 口の周りの筋肉(口輪筋:口を閉じる筋肉)を、眼の周りで放射状に筋肉を伸ばすようにマッサージします。(3分間)
⑤ ①-④を順番に繰り返します。(3分間)この繰り返しを、一日の間でなるべく多く行いましょう。これ以上多くても、もちろん構いません。
2.話ている時や食事中は、おでこの筋肉を使わないように気をつけながら、眼を見開くように意識しましょう。
3.麻痺した表情筋を早く動かそうと頑張って、眼を強く閉じようとしたり、笑おうとする練習はしないで下さい。昔よく言われた「百面相」をするリハビリは行わないでください。また電気刺激療法は、かえって異常共同運動を強く引き起こしてしまう原因になります。
4.眼を開けた状態で口を閉じたり開いたりする運動を10回、口を閉じた状態で眼を閉じる運動を10回おこないましょう。口と目の開閉が連動してしまう異常共同運動の予防役立ちます。